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培養苗にご注意

 培養によって優良品種を繁殖することが急速に普及し、販売会やオークションなどにも培養苗が多数出品されるようになってきた。優良品種が入手容易になり、多くの趣味家がそれらを楽しめるようになることは培養の大きな利点である。その一方で培養の普及につれ、様々な問題点も出てきている。


 そのひとつが、価格急落や市場低迷の危険性である。収集家にとって優良品種を安く入手できるのは基本的に歓迎すべきことである。しかしそれが希少なものであり、評価(人気)の高いことも収集の大きな要因であろう。したがって優良品種が入手容易になるのはいいが、あまり安価に売り出され、誰でも持っているようでは人気は急落(価格も急落)してしまう。

 培養苗が大幅に安く売り出されると高い品種も培養待ちで全く売れなくなり、市場は大きく低迷する。東洋蘭では培養により市場が壊滅的になった例がある。ハオルシアでも培養苗が原因で、今春以降韓国市場は急速に冷え込んでしまった。

 さらには最近オランダでは日本の優良品種が培養され、ネットを通じて極めて安く売り出されている。こうなるとオランダで培養が始まった、あるいは材料が送られた、というだけでその品種の市場は大きく低迷する可能性が高い。韓国市場の冷え込みが日本のみならず世界へ広がることになる。

 培養苗だからといってあまり安価に売り出すと、一時的に売れても長期的には市場を低迷させ、培養業者自身も結局は自分の首を絞めることになる。培養関係の方々にはこの点に留意され、市場を混乱させない程度の価格設定をお願いしたい。


 培養に関わるもうひとつの大きな問題は育種家保護である。育種家はその分野の園芸的発展の要である。しかし培養が普及すると長い時間と労力をかけてやっとできた優良品種もアッという間に大量繁殖され、陳腐化してしまう。またそうなると育種家はそれまでの労働対価や育種経費を回収できない。

 また培養業者ばかりが利益を得て、育種家がそれに見合う対価を得られない状況は、著作権が確立される前の作曲家などと同じである。これでは育種家は育種事業に魅力や意欲を失い、新品種の育成は停滞してしまう。

 すなわち優良品種を培養して得られる利益の一部は育種家に還元されるべきであろう。現在は登録品種にしか育種家の権利は保護されていないが、培養が一般化する今後は著作権と同じようにより包括的な育成者保護の仕組みが必要である。

 さらにまた法的整備の前に、新品種の発表後5年程度は培養をしないなどの一般的ルールの整備も必要かもしれない。

 包括的育成者保護が法律化されるのはまだまだ先のことであろうから、育種家は当面次のような自衛をする必要がある。

(1)優良品種ができた場合、展示や写真発表するだけで、苗は一切販売、譲渡しない。ただしどんな優良品種でも10年もすればそれを凌ぐ品種が出てくることは覚悟する必要がある。

(2)優良品種ができたらまず10本か20本の販売用苗を用意し、それを一斉に売り出して費用などを回収する。それまでは販売や譲渡は一切しない。(おそらく最も現実的な自衛策)

(3)第三者への販売・譲渡を禁止する特約(契約)を付けて苗を販売、譲渡する。(ただし信頼できる相手に限る)

 これも比較的現実的だが、契約や裁判が嫌いな人には向かない。また契約には違約の場合の反則金等の規定が絶対必要で、これがないと全く実効性がなくなる。

(4)できた優良品種を日本やオランダで品種登録する。

 手続きは面倒で費用もかかるが、強力な自衛手段である。ただし品種登録は国ごとに行う必要があるし、中国などではハオルシアは品種登録できない。しかし他国で生産された苗を日本に輸入することは規制できる。


 培養苗は初め軟弱であるが、培養瓶から出して2年もすれば葉挿しなどの繁殖苗と区別がつかない。また一般的に培養苗の方が成長が早く、大きく育つ。鬼武者などは培養苗でないと立派な完成株にならない。価格の点も含め、収集家はむしろ培養苗を購入したほうが良い。

 さらに培養苗はすべて同一クローンなので原則同じ形態のはずであるが、斑入りに限らず、種々の変異体(枝変わり)が生じている。はたして突然変異(枝変わり)なのか、栄養条件によるものなのか、さらに追跡調査が必要なものもある。しかし培養でこのような変異体が生じることは確かなので、販売や譲渡の際は注意が必要である。

Caution of slump by tissue culture
Many Japanese cultivars are now propagated by tissue culture in Japan, China, Korea or Holland and their price became cheaper. It is basically good for many collectors. But a collector always likes good, rare and highly apprised ones. So, if a cultivar sells very cheap by tissue culture, its popularity will soon slumped.
And if a tissue culture nursery sells some popular cultivars very cheap, collectors will become cautious about slump of other cultivars. Consequently, many popular cultivars will slump, and the market may fall in depression. It actually happened in Korea this year. Tissue culture nurseries must be careful to avoid slump.

2012.9.4