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 ■ ハオルシア研究 22号 p.14~15 「組織培養について 林雅彦」 補足説明


組織培養に関する補足   林 雅彦

 万象「大紫」と「紫万象」の関係について、「大紫」は「紫万象」のウイルスフリー苗ではないかと書いたが、当時(約30年前)培養で育成した「紫万象」の苗は10本以上あったはずであるが、「大紫」のような特徴の苗は岡野氏以外のところからは報告されていない。またこのとき1本だけ出現した紫万象錦は川東氏のところで長らく栽培されていたが、この個体も明らかに「紫万象」であり、「大紫」ではなかった。培養苗の内、「大紫」1本だけがウイルスフリーで、あとの苗はすべてウイルスフリーではなかったというのはやや考え難い。むしろ「大紫」は培養によって出現した芽条変異苗であると考える方が自然かもしれない。

 ただし「紫万象」でも窓が小さく、非常に子吹きが多い苗はウイルス感染苗の可能性が高いので要注意である。同じことはM9その他の苗でも言える。また胴切り繁殖を繰り返している栽培家の苗は危険性が高いのでやはり要注意である。


 なおランの栽培温室などでは、一般に温室内はもちろん、その周辺でも喫煙は厳禁である。極端な場合には喫煙(常習)者は見学、入室一切お断りという栽培家もいる。たばこの吸い殻はもちろん、煙の中にも感染力のあるウイルスが含まれているし、常習者では手にもウイルスが付着していると言われている。ランはウイルスの影響が出やすいため、栽培家はたばこの害(すなわちウイルスの被害)を防止するために非常に神経を使っている。

 ハオルシアは成長が遅いためウイルスの影響は比較的目立たないが、それでも上記のように窓や植物体が小さくなる、子吹きしやすくなる、模様が不鮮明になる、などの症状が見られる。ハオルシアに限らず、サボテン・多肉植物界全体としてこれまでウイルスの被害に無神経すぎたのではないか? 今後は真剣にウイルスの被害防止策に取り組み、栽培植物に対するたばこの害を再確認する必要がある。


 培養苗は軟弱なため容器から取り出した後、1年くらいは腐りやすい。植え付けた後1カ月くらいは鉢内の菌相(菌叢)が安定しないため、特に要注意である。記事の中では6月から9月の間は輸入を見合わせる方が無難と書いたが、5月に輸入すると菌相が安定しないうちに梅雨に入る可能性があり、大変危険である。したがって培養苗の輸入は4月までに終了する方が無難である。

 また培養の斑入り苗は特に性が弱いため、輸入苗は腐らないまでもなかなか発根しない。腐死のリスクも考え併せると、培養の斑入り苗は輸入後日数がたって完全に発根した苗を求める方が安全だし、少量なら経費的にも安くつく可能性が高い。